名言から学ぶ「心の置きかた」

第3回『それでも人生にYESと言う』

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第2次世界大戦の時にアウシュビッツやダッハウなどの悪名高いユダヤ人

収容所があったことはご存知のことと思います。

ここで人は、全ての尊厳もアイデンティティも奪われます。

持ち物や衣服は奪われ、髪は剃られ、名前も取られ(収容者は番号で呼ばれます)

そして、生命さえも・・・・。

昨日まで生きていた人が、朝になったら冷たくなっている。

突然ガス室に連れて行かれ、死体となって冷たい穴に埋められてしまう。

食事は一日一食、水にじゃがいもの切れ端がひとつ浮いているような

粗末なもの。

いつ自分が死ぬか誰もわからないし、この状態がいつまで続くかも分からない

状態の中での肉体的な重労働の毎日。まさに、極限の世界です。

 

この生き地獄で、ある一人の医師が自らを問いかけます。

「人生とは生きるに値する価値あるものなのか?」

後にロゴセラピー/実存療法で有名な精神科医V・E・フランクルという

医師です。

深い思索と地獄の体験から、彼はこの問いかけ自体が間違っていることに

気づきます。

私たちが「生きる意味があるのか」と問うのははじめから誤っているのです。

 つまり、私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。

 人生こそが問いを出し、私たちに問いを提起しているからです。

 私たちは問われている存在なのです』

ん? どういうこと?

私たちが人生を問うのではなく、人生が私たちに問うているのだ、

逆なんだよ、ということです。

つまり、

『人生とは、生きる意味はあるのか?』

ではなく、

『あなたは人生をどんなふうに生きているのですか?』

という逆転の発想です。

 

そして、さらに問いを昇華させます。

『人生を価値あるものにするためには、どうすればいいんだろう?』

人はそれぞれ、様々な状況・環境・人間関係などに囲まれて生きています。

それはある意味運命とでもいうことが出来るかもしれません。

そのような運命の中で人生を意味あるものにしていくために、

私はいったい何ができるんだろう?

 

彼は3つの提言を残してくれました。

≪人生を意味のあるものにする3つの価値≫

 

①創造価値

「なにかを行うこと、活動したり創造したりすること、自分の仕事を

実現すること」によって実現される価値。

そうです、何か行動をし、結果を作るのです。仕事でなくてもかまいません。

趣味でも特技でも、あるいはボランティアでもなんでもかまいません。

とにかく、行動して今までとは違う何かを創りだすのです。

これが、創造価値です。

 

②体験価値

「何かを体験すること、自然、芸術、人間を愛すること」によって

実現される価値。

そうです、体験をするのです。

自分の好きな音楽を聴き、そのリズムや波長と一体になったとき、

自分が音楽と溶け合ったとき、この上もないエクスタシーを感じます。

他にも壮大な自然の中ですばらしい景色に出会い、地球と溶け合ったり、

夕陽と一緒に魂が震えたり・・・。あるいは愛する人と共に時間を過ごす。

自分の深い琴線を震わせる、それが体験価値です。

 

③態度価値

「自分の可能性が制約されているということが、どうしようもない運命

であり、避けられず逃げられない事実であっても、その事実に対して

どんな態度を取るか」ということによって実現される価値。

そうです、自分が示す態度そのものが価値を高めるのです。

地獄のような収容所の中で、ごくごく少数であったけれど、まるで神の

ように愛にあふれる存在の人々がいたそうです。いつ死ぬかも分からない、

空腹と栄養失調の究極の極限状態のときに、困っている他人に親切に

愛を与えられる人々。彼らの多くは生き延びることは出来ませんでしたが、

彼らが示した「愛と勇気」こそ、彼ら自身の人生の価値を高く、そう、

天空に突き抜けるほどに高く示したものだとフランクルさんは残しています。

 

振り返って僕たちはどうでしょうか? 

少しでも思い通りにいかないと、すぐにイライラして他人を責める。

体調が悪かったり、身体が痛かったりすると、すぐに泣き言やグチを繰り返す。

うまく行かないことがあると、うつうつと自分を責め、引きこもってしまう。

フランクルさんはこうも言っています。

『その時、その時に、どういうやり方であっても、人生を、瞬間を、

意味のあるものにするかしないか、という二者択一しかありません』

そうです、選択肢は二つしかないのです。

⇒人生を意味あるものにするのか

⇒人生を意味のないものにするのか

おお~、なんだかロルプレイングゲームみたいですね。どっちを選ぶか?

 

さて、もうひとつ。

『ですから、そのときそのとき、どのように答えるか決断するしかありません。

そのたびに、全く具体的な問いが人生から私たちに出されているのです』

人生からの問いかけは常に『いま・ここ』なのです。

後で決めよう、とか○○が出来たら、うまくいったら~しよう、ではないのです。

選択は常に『いま・ここ』でどーする? なのです。つまり、

すべては、ひとりひとりの人間にかかっているということです。

すべては、創造性を発揮し、言葉だけなく行動によって、生きる意味

それぞれ自分の存在において実現するかどうかにかかっているということです』

 

人間はあらゆる事にもかかわらず、「困窮や死」「病気」「強制収容所の

運命の下」であっても、『人生にYESと言うこと』が出来るのです。

 

自分の人生を作り出すのは、他ならぬ自分自身。

自分の人生の価値を高めるのも、そうしないのも、他ならぬ自分自身。

フランクルさんの言葉を参考に、自分の人生の価値を自分らしく、

楽しみながら、意気揚々と高めてみませんか?

 

刀根 健(とね たけし)氏のご紹介

*資格 産業カウンセラー(初級)、TAインストラクター(上級)

*経歴 TA(交流分析)理論を中心にコーチングスキルやグループワーク、

    また人事制度の改革や風土改革などのコンサルティングを得意とする。

    企業や病院を中心に活躍中。

*主な著書 快適な人間関係を築く『ストローク・ライフのすすめ』(フォーメンズ出版)