◇若年性 線維筋痛症


 小児期にみられる線維筋痛症は若年性線維筋痛症

といわれ、発症は 10才前後に集中しています。

男女比は1:4~8と、女児に多い傾向が あります。

 

症状の中心は「全身の疼痛」にあり、軽く触れただけで

激しい疼痛を訴えるアロデニアを特徴としています。

これに加えて、原因不明の筋肉痛、関節痛や持続的な

頭痛を訴えることも少なくありません

 

慢性疲労感、睡眠障害、低体温を訴える例は半数以上あり、

経過がすすむと異常な発汗、末梢冷感(手足が冷たくなる)、

チアノーゼ、四肢の浮腫(むくみ)などの自律神経症状が

加わってきます。

 

このため登校障害(不登校)に至る子どもがほとんどです。

ときに摂食障害(食思不振症、過食症)に陥る例もあります。

 

線維筋痛症では他の疾患に伴う疼痛とは異なり臓器・

組織の炎症を認めないことが特徴です。

 

また、一定の身体部位に圧痛(押すと痛い)があります。

これが「圧痛点」で、極めて限局しており、

この点をわずかにずれても圧痛はでなくなります。

 

慢性に経過したリウマチ・膠原病患者の一部以外に

この圧痛点を認めることはないので、

線維筋痛症の診断の有力な根拠になります。

 

若年性線維筋痛症が成人のそれともっとも異なることは、

疼痛が始まる年齢に大きな特徴があることです。

9歳~10歳にピークがあり、子どもの発育過程の中で

「早期思春期」と呼ばれる時期に相当します。

 

また、若年性線維筋痛症の子どもは、性格もきわだっており、

いわゆる“良い子”で、真面目、頑固、完璧主義、潔癖主義、

妥協を許さないなど柔軟性の欠如があり、

コミュニケーション障害、融通性に欠ける性格、

他人への過剰な気遣いなどが特徴的です。

この点は線維筋痛症を考える上で、鍵となる特徴と思われます。

 

個々の例には発症の原因となる事態があり、

子どもにとって強力な「心的ストレス」が発症の契機に

なっていると思われます。

 

若年性線維筋痛症は、

特定の発達時期にある特異な性格傾向の子どもに、

不可避的な心的ストレスが加わって生じたものと

考えることができます。

 

“心的”とはいえ、疼痛は実際に生じており、

圧痛点という共通の所見があり、

所謂“心因性疾患”とはいえず、

脳内環境の生化学的な変化が推定されます。